【簡単解説】水産資源の減少<状況と要因について>

【簡単解説】水産資源の減少<状況と要因について>

魚の減少が著しい。

日本では近年、毎年のようにイワシやサンマといった魚の不漁がニュースで報じられています。

特に日本人にとってなじみ深い秋の味覚であるサンマの不漁は深刻なものがあります。

また、ウナギについても「とれなくなっている」「値段が高騰している」ことは僕たちが身近に感じてることでしょう。

ウナギが絶滅危惧種に指定されているということは、巷でも言われていることなので、あなたもご存知かもしれませんが、日本に生息する二ホンウナギは、2014年にIUCNによるレッドリストで「絶滅危惧ⅠB種」に指定されています。

さらにこれまた日本に住む僕たちにとってとても身近な魚であるマグロも、クロマグロをはじめいくつかの種がレッドリストにおいて絶滅危惧種に指定されています。

クロマグロについては、先日IUCNが発表した最新版のレッドリストについての毎日新聞の記事がありましたので、最新の分類はこちらでご覧になれます。

クロマグロ、絶滅危惧種から危機ランク引き下げ レッドリスト最新版 毎日新聞

絶滅危惧種に関する「レッドリスト」に関しては記事としてまとめていますので、詳しい説明はこちらをご覧ください。

【絶滅危惧種】絶滅のおそれが高い野生生物のリスト「レッドリスト」とは?

というわけで、今回は危機が叫ばれる水産資源についての記事をまとめていきたいと思います。

まずは「なぜ水産業に危機が訪れているといわれるのか」「どのような状況にあるのか」世界の水産業、水産資源の概要について大まかに見ていくことにします。

世界の水産業

世界全体の魚介類の生産量は下のグラフをご覧の通り、増加の傾向にあります。

1950年に世界で約2000万トンだった魚介類総生産量は、1990年に1億トンを突破し、2018年には1億7900万トンと上昇を続けてきました。今後の予想では2030年には2億トンに到達することも予想されています。

これはグラフでも示されている通り養殖による生産量が大幅に伸びていることによります。

出典:水産庁、FAO

その要因は世界の魚介類需要の増加にあります。

世界の1人当たりの魚介類消費量は過去半世紀で2倍以上に増加しました。

消費量が増大した理由には、人口の増加と途上国や新興地域において経済成長が進んだことが挙げられます。

経済成長とグローバル化が進んだことを受けて、輸送技術の発達やたんぱく質を多く含む肉、魚等へと食生活の移行が進んでいることで魚介類の消費量は増大し続けています。

また、健康志向の高まりも魚介類の消費を後押ししている要因のひとつとして考えられます。

こうして世界における魚介類の消費量は大幅に伸びてきました。

そして、その需要を支えるために大幅に伸びたのが養殖による生産です。

世界の旺盛な需要にあわせて、中国を筆頭にアジア新興地域の国を中心に養殖による生産が大幅に伸びて、現在では天然モノの漁獲量を上回っているほどです。

一方世界の状況とは反対に、日本の魚介類生産量は、1984年の1,282万トンをピークに、その後急速に減少に向かい、現在も緩やかに減少を続けています。

それに伴い、消費量も減少をしてきました。
一人当たりの年間魚介類消費量は、2001年の40,2キログラムピークにして、2017年には24,4キログラムとピーク時の6割にまで落ち込みました。

近海に豊富な漁場を多く持ち、沖合漁業を中心に天然モノの魚をとる漁業が盛んだった日本ですが、現在は急激な漁獲量の減少に直面しています。

これまで乱獲ともいえるほどの漁業を行ってきたことで、資源が危機的な状態にあることが叫ばれているのです。

 

出典:FAO「世界漁業・養殖白書2020年」

上のグラフは、世界全体の漁獲されている資源状態の動向を示したものになります。

魚の数が少なくなると、繁殖して個体数を回復させるには時間が必要になります。
そして、個体数が回復するスピードよりも速いペースで漁を行い魚を獲っていると、必然的にその個体数は減少していくことになります。その個体数を資源量として、漁獲されている種の魚がどれくらい持続的であるのか、それを表したのがこのグラフになります。

2017年時点では、漁業資源のおよそ34%が生物学的に持続不可能な水準で漁獲されていたとされていて、これはつまり、乱獲されていたということになります。

とりわけ、この乱獲が顕著にされてきたのが日本であり、前述のように漁獲量が減少しているという状態に直面してしまっているのが今の日本なのです。

気候変動の影響

水産資源減少に大きな要因となっているのが気候変動の影響です。

気候変動が水産資源に与える影響のひとつに海水温上昇があります。

海水温上昇が海洋生態系に与える影響に対してはまだはっきりとはわかっていないところも多くあります。海流やイオン濃度などさまざまな要素があり、そのメカニズムが複雑となっているので、どれくらいの影響をあたえているのか、その予測や計算が難しいからです。

しかし、海洋生態系に何らかの影響を及ぼすことは確実であり、魚の生息域の変化や漁獲量が減少することが予想されています。

水温の変化によって、魚が自らに適した水温の海域に移動することが考えられので、魚の生息域に大きな影響を与えることになります。

また海面の温度が上昇することで、その水が軽くなって海面に止まろうとするといいます。すると、海面付近の水と深層の水とが混ざりにくくなって、深海の栄養分が海面付近に行き渡らなくなります。これによって、魚の餌となるプランクトンが減少することになるという研究成果が出されており、魚の減少につながることになるおそれがあるといいます。

さらに海水温が上昇することで、魚の代謝量が増えて魚が小型化するという予測も出されています。また魚の成長が遅れることで産卵開始年齢が高くなったり、産卵量の減少や卵質の悪化が懸念されていて、これも魚の減少につながる要因になると危惧されています。

では、気候変動の影響を受けてどれくらい漁獲量は減少することになるのでしょうか。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって、予測が出されています。

この報告書では、2100年ごろまでに世界の平均気温が2000年ごろから2.6℃から最大4.8℃まで上昇した場合には、世界の漁獲量はおよそ20%減少することになると予測がされています。

海水温上昇によって魚が適温を求めて水温の低い海域へと移動することになるため、北極圏をはじめ緯度の高い地域では漁獲量が増えることになりますが、反対に緯度の低い熱帯地域では大幅な減少になることが予想されています。

特に大きな影響を受けることになるのが、現在漁獲量が多い漁業が盛んな地域で、日本や中国、ペルーといった国です。

水産資源の減少に影響を及ぼすことになるのは気候変動だけではありません。
もっと直接的に人間が海洋生態系に悪い影響を与えている大きな問題があります。
それが「海洋プラスチックごみ問題」です。

海洋プラスチックごみ問題による影響

人間社会がつくりだしたプラスチックが廃棄されて、大量に海に流れ出し、海を汚染させてしまっているのです。

海洋プラスチックごみ問題については、以前の記事でこの問題をまとめたものがありますので、こちらからご覧ください。

【簡単解説】プラスチックであふれた海「海洋プラスチックごみ問題」とは?

海洋プラスチックごみ問題による海洋生態系への影響や、それがつながって人間にどういう影響を与えることになるのかはまだはっきりと明らかになっていないところは多くあります。

しかし、海洋生態系へ良くない影響を与えることになる可能性は高いと見えます。

海の生物が自身の食べ物と一緒にプラスチックを飲み込んでしまうと、プラスチックの添加剤を通して化学物質を体内に取り入れることになります。そして、食物連鎖を通じて、化学物質が海洋生態系の多くの生物の体内に溜まっていってしまうことになるのです。

プラスチックの添加剤は内分泌撹乱物質を含んでおり、プラスチックを体内に取り込んでしまうことで、生物の免疫系や生殖系に悪影響を与える可能性があることが指摘されています。

それだけではありません。
ビニール袋を誤って飲み込んでしまったり、廃棄された漁網に絡まってしまったりすることで、魚や海の動物が死んでしまうこともあります。

今回は、水産資源の減少について簡単にまとめた記事になりました。

この問題もやはり気候変動の影響を大きくうけている問題です。

漁獲量を回復させるための対策をうつことはもちろん必須ですが、
気候変動を緩和していくことが一番の対策になる問題だと思います。

まだまだ大まかにしか触れられていないですし、また少しテーマを絞って新しい記事を書いていけたらと思います。

 

参考文献

クロマグロ、絶滅危惧種から危機ランク引き下げ レッドリスト最新版  https://mainichi.jp/articles/20210904/k00/00m/040/264000c

データでわかる2030年地球のすがた 夫馬賢治著 2020年 日経BP

水産庁ホームページ https://www.jfa.maff.go.jp/index.html