【絶滅危惧種】絶滅のおそれが高い野生生物のリスト「レッドリスト」とは?

【絶滅危惧種】絶滅のおそれが高い野生生物のリスト「レッドリスト」とは?

「レッドリスト」という言葉を聞いたことはありますか。

このブログにおいても以前の記事でまとめたように、近年は気候変動がすすんでいて、その影響をうけ、豪雨や山火事など世界中のいたるところで異常気象が発生していて、大きな被害が及んでいます。

さらに、その異常気象と僕たち人間の活動によって、特に森林火災の被害が大きくなっていて、森林破壊が重大な問題となっていることは、このブログにおいてもまとめた通りです。

【簡単解説】森林破壊について<その原因は?><与える影響は?>

こうした気候変動と森林破壊によって、大きな影響を被っているのが野生生物たちです。
野生生物たちの生息地がこれまでにない速さで失われていっているのです。

世界自然保護基金(WWF)が公表した報告書によると、野生生物の個体数は過去50年未満で3分の2以上が減少したという報告が出されています。

この報告書では、野生生物の壊滅的ともいえる減少には減速の兆候がみられず、自然界がこれまでに見たことのない速さで人間によって破壊されているとして警告が鳴らされています。

こうした状況を受けて当然、絶滅の危機に瀕している野生生物も増えてくることになります。
そうした絶滅危惧種を保護するためには、その種の現在の状態を調査して把握する必要があります。

そのために野生生物を調査して、絶滅の危機がある種など、それぞれ評価してまとめたものが「レッドリスト」と呼ばれるものです。

この「レッドリスト」とはどういうものであるのかをこの記事では見ていきましょう。

「レッドリスト」とは?

レッドリストとは絶滅のおそれのある野生生物の種のリストのことです。

レッドリストは国際機関である国際自然保護連合 (IUCN)が作成をしています。

IUCNのレッドリストは、86年に第一版が、次いで88年に、そしてそれぞれ90年、94年、96年、2000年、2004年にその続版が刊行されてきました。

そして現在は毎年レッドリストが更新されていて、その全てのデータを、インターネット上で検索することができます。

2021年7月現在では、約37,480種の野生生物が「絶滅のおそれが高い種」とされてリストに名を連ねています。

IUCNのレッドリストは世界全体を対象として評価されたものです。
しかし、野生生物の生息域や生息地は当然地域ごとで大きなばらつきがあり、絶滅危惧種の調査や保護はその土地及び周辺の生物を中心として国ごとに行われることが多くなります。

そのため、その国の政府や地方自治体、NGOなどの支援団体によって、独自にレッドリストを作成することも必要になります。

日本国内においては、環境省が日本版のレッドリストを作成していて、都道府県や市の地方公共団体やNGOなどによっても独自に作成されています。

レッドリストのカテゴリー分類

レッドリストでは絶滅のおそれが高い野生生物を、それぞれ絶滅危機の度合いによってカテゴリー分けしています。

IUCNはそれぞれの専門分野の研究者をつかって、野生生物を調査しています。それに基づき、野生生物1種ごとそれぞれの絶滅危機の度合いを評価しています。

このカテゴリー評価は、個体数や生息域の減少が確認された種は、より危機が高いとされるランクに格上げされ、逆に回復が認められた種については、危機ランクが格下げされるなど、再評価のたびに修正が施されています。

IUCNでは、「絶滅のおそれが高い種」として現在以下の5つに分類されています。

EX 絶滅種 絶滅が確認された
EW 野生絶滅種 野生では絶滅した
CR 近絶滅種 絶滅寸前の状態にある
EN 絶滅危惧種 絶滅するおそれが非常に高い
VU 危急種 絶滅のおそれが高い

ICUNのカテゴリー分けされている代表的な動物の例を少しだけ挙げていきます。

野生では既に絶滅した種である野生絶滅種(EW)には、シロオリックス、ヒトコブラクダなどの生物がいます。EWに認定されている動物は、生息地における野生の個体が確認されなくなっており、本来の生息地以外での野生個体や飼育下の個体ではまだ生存が確認できる種です。

個体数が少なく、絶滅寸前の状態にあると評価されている近絶滅種(CR)の野生生物には、イリオモテヤマネコ、オランウータン、クロサイ、マルミミゾウ、スマトラトラ、ベローシファカなどが分類されています。

絶滅のおそれが非常に高いと評価されている絶滅危惧種(EN)の野生生物は代表的なところでは、アジアゾウ、アフリカゾウ、オカピ、ジンベエザメ、チンパンジー、マウンテンゴリラ、ワオキツネザルなどの野生生物が分類されています。

そして、絶滅のおそれが高いとされる危急種(VU)に分類される野生生物には、インドサイ、カバ、キリン、コアラ、ジャイアントパンダ、チーター、ライオン、ホッキョクグマなどの動物園でもなじみ深い多くの種が分類されています。

日本では環境省が同様に、日本に生息する野生生物について、生物学的な観点から個々の種の絶滅の危険度を評価し、レッドリストとしてまとめています。

環境省では、「絶滅のおそれが高い種」のカテゴリーを以下のように分けて評価しています。

EX 絶滅 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
EW 野生絶滅 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ 存続している種
CR+EN 絶滅危惧Ⅰ類 絶滅の危機に瀕している種
CR 絶滅危惧ⅠA類 ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
EN 絶滅危惧ⅠB類 IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

日本版のレッドリストはおよそ5年ごとに全体的な見直しが行われていて、生息状況の悪化等によりカテゴリー分類の再検討が必要な種については、時期を定めず必要に応じて個別に改訂することされています。

最新の改訂版は、2019度に公表されたレッドリスト2020になっており、2020年版のリストにおいては、3,716種が絶滅のおそれのある種だとしてリストに掲載されています。

また全世界の種を対象にしているIUCN版のレッドリストと日本版の環境省による
レッドリストの危機度合いの評価とが必ずしも一致しているわけではありません。
また、種の分類においても、世界と日本で一致していない例は少なからずあります。

このような差は、いかなる国や地域の場合においても起こり得るもので、どこのレッドリストの評価が正しいというわけではありません。しかし、掲載や評価の各基準に基準については、課題が残されていることも確かです。

また日本のほとんどの都道府県においても、それぞれ県版のレッドリストが作られています。

これらのレッドリストの多くは、環境省による評価方法が使われています。
それぞれ独自に県内の野生生物の危機を調査して、危機の度合いを調べたものがまとめられています。

国レベルで見たときには、なかなか見えてこない地域ごとの野生生物の危機を明らかにすることで、この各県版のレッドリストは大きな意味があるものになっています。

レッドリストはなぜつくられているのか?

このレッドリストは、野生生物の絶滅危機とその度合いを明らかにしようとするものであり、捕獲規制等の直接的な法的効果を伴うものではありません。

ですので、ここでリストアップされた野生生物がそのまますぐに法的な保護の対象となるわけではありません。実際に絶滅の危機にあるとされた野生生物をその状況から救おうとするためには、生息地のある国や地域が、それぞれでルールや手立てを講じて保護していかなければなりません。

しかし、だからといってレッドリストに価値がないということではありません。

レッドリストは、失われつつある地球の自然と生物の多様性をわかりやすい形で僕たちに示してくれているもので、一つの大きな目安となるものです。

社会への警鐘として広く社会に情報を提供することで、
様々な場面で多様に活用されていくべきものになっています。

こうしてつくられたレッドリストを有益なものとするためにも、
これをもとにして絶滅が危ぶまれるような野生生物を保護する
ための具体的な対策や取り組みが進められていく必要があります。

最後に絶滅の危機にあるとされた野生生物を保護していくためにどのような対策や取り組みがなされているのかについて、簡単にまとめることにします。

絶滅のおそれが高い野生生物に対しての対策

絶滅危惧種などを守るための対策として、国際的な取り組みが行われています。

その中でも有名な3つの条約を以下に紹介していきます。

一つ目が「ワシントン条約」です。

絶滅危惧種の違法取引を禁止する国際条約として、1973年に採択されたもので、輸出国と輸入国が協力して規制を実施して、絶滅危惧種の保護を図ることを目的にしています。

二つ目が「二国間渡り鳥等保護条約」です。

渡り鳥が行き来する国々で締結されていて、絶滅のおそれがある鳥類を相互に通報し、輸出入規制などを行うこととしています。

三つ目が「ラムサール条約」です。

ラムサール条約では、国際的に重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全を促進するためおよび賢明な利用促進のために、各締約国がとるべき措置等について規定がされています。

日本ではこの3つの条約に加えて、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」が1993年に施行されて、国内に生息・生育する種または外国産の希少な野生動植物を保全するための必要な措置が定められており、野生生物の種の保存に取り組んでいます。

また生息地の保護として、捕獲や採取等の規制を行うだけでは個体群の存続が困難である場合には、その生息・生育環境を保全するために「生息等保護地区」を指定しています。

さらに保全や再生を行うだけでなく、個体の繁殖促進などの事業を推進するため「保護増殖事業計画」が策定されて、保護増殖の取り組みも行われています。

この保護増殖事業において、地方公共団体を中心にトキやシマフクロウ、ツシマヤマネコ、オガサワラシジミ等の動植物で繁殖への取り組みが行われており、少しずつですが個体数を増やすなどの成果が出ています。

 

参考文献

『絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリスト「レッドリスト」について』WWFジャパンホームページ
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3559.html#01

環境省ホームページ https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/index.html