【簡単解説】森林破壊について<その原因は?><与える影響は?>
アメリカ・カリフォルニア州で山火事の被害が続いています。
アメリカ・カリフォルニアではここ近年毎年山火事の被害に見舞われています。
今年2021年は、過去最悪といわれた2020年の規模を上回るほどのペースで燃え広がっています。
現在の2021年9月初頭までに2週間以上燃え続けていて、既に東京23区より広いおよそ8万ヘクタール以上が焼失したとされています。
また、2019年に発生したオーストラリアの山火事もあなたの記憶に新しいところでしょう。
日本でも大きく報道されたこの山火事はおよそ半年の間燃え続け、広い面積の森林が焼けて消失することになりました。また、そこに生息する多くの生物が被害を受けることになりました。
近年異常気象が頻発に発生することで、こうした山火事による被害も大きくなっています。
山火事によって問題となるのが森林が失われていくこと、森林破壊の問題です。
森林破壊といえば、アマゾン熱帯林の著しい減少も大きな問題になっています。
今回はこの森林破壊という環境問題について簡単に解説をしていきます。
この森林破壊の問題は、自然災害というイメージを持たれているかもしれませんが、プラスチックごみ問題などと同様に人間の活動による深刻な人的災害のひとつです。
この理由は森林破壊を進めている原因が直接的に人間の活動にあるからです。
この森林破壊の原因についてや森林破壊によって受ける影響などをわかりやすく簡単にまとめてみた記事になりますので、関心のある方は読み進めてもらえると簡単な理解ができるものになっています。
では本文に入っていきます。
森林破壊とは
森林破壊とは、自然の回復力を超える伐採や焼失などによって、森林面積が減少している現象のことをいいます。
森林は地球上の陸地面積のおよそ3割を占めています。
しかし、年間およそ470万ヘクタールとも言われる森林が毎年減少し続けている現状があります。
その結果、世界の森林面積は1990年から2020年の30年間で1億7800万haが減少したという数値が出されています。
これは日本の国土面積の約5倍にも相当する数字です。
森林の働き
森林は地球にとってとても重要な働きをします。
「森林破壊はなぜ地球環境に悪いとされていて環境問題になっているのか。」
ここを理解するためにも、森林のどのような役割を負っているのか、どのような働きをしているのかについて、まず少し解説していきます。
「森林がどのような働きをするのか」
これまでの学びの中できっとご存知のことも多いかもしれませんが、
森林の重要な機能、働きをここで少しおさらいしておきましょう。
森林のいくつもの重要な働きについては、森林の多面的機能と呼ばれていて、これらが森林が地球にとって大事なものである理由になっています。
生物多様性の確保
まずそのひとつ目は、生物多様性保全機能と言われるものです。
森林は植物に菌類や、昆虫、鳥、爬虫類、哺乳類などの動物、それらすべての多種多様な生物の生息場所となっています。森林があることで、この地球の豊かな生態系が支えられているのです。
地球環境を守る役割
ふたつ目は地球環境保全機能です。
木々は光合成をして二酸化炭素を吸収して、酸素を放出します。
これは小学生のころに習った植物の大事な特徴ですので、あなたも理解していますね。
森林は二酸化炭素を吸収して、空気をきれいにすることができます。
二酸化炭素は地球温暖化の原因になっている温室効果ガスなので、地球温暖化を防止する重要な役割を森林は持っています。
自然災害の防止
みっつ目は、土砂災害防止と土壌保全機能です。
森林は木や草が地面を覆い、その根が土壌を押さえるので、森林に雨として降った水を地下や下流に急激に流さずに保水します。これにより表面土壌の流出を抑えるとともに、土砂崩れ等を防止させています。また、落葉や動物の死がいなど有機物が土壌に養分を与えています。それは河川を通じて海へ流れ、海にも栄養が供給されています。
その他の重要な働き
このほかにも森林の多面的機能はいくつもあります。
保健・レクリエーション機能、快適環境形成機能、文化機能、物質生産機能などです。
森林はキャンプや山登り、ハイキングなど、レクリエーションの場も提供します。加えて森林浴など休息やリフレッシュができる場でもあります。
また、森林は蒸発散作用により夏の気温を下げ、冬の気温を上昇させるなど気温を調節する役割、防風や防音などの働きもあります。快適な環境を形成する機能も果たしているのです。
さらに森林は文化的な役割も果たしています。
その自然や景観は行楽や芸術の対象となることや、宗教や信仰の対象になることもあります。
特に日本人にとっては、伝統文化や宗教観の形成に森林が大きく関わっています。
また、教育や体験学習の場としての役割も果たします。
そして、森林は木材や紙の原料、キノコや山菜などの食べもの、薪や炭といった燃料、工芸材料をもたらす物質生産機能の役割も果たしています。
森林破壊の原因
森林破壊は何によって引き起こされるのか。
ここからは森林破壊の原因について簡単に書いていきます。
森林破壊の原因はいくつかあります。
山火事
まず冒頭で触れた山火事がそのひとつです。
近年の異常気象による高温や乾燥で、山火事がかなり増加しています。
高温と乾燥で火がついた森林が、次々に燃え広がっていってしまっているのです。
山火事は自然に発生するものもありますが、多くの場合発火の原因は人為的なものに求められます。火入れや焚火、また放火によってついた火が燃え広がって大規模な山火事になっているのです。
そして、このあとに触れる森林破壊の原因もすべて人間の活動によるものです。
つまり、森林破壊は自然災害ではなく、人的災害だといえます。
土地利用変化
森林破壊の原因はいくつかありますが、最も大きなそれは土地利用変化によるものです。
これは森林を伐採して大規模な農地に開発することなどです。
世界の人口増加に伴う食料やエネルギー需要の増加に対応するために、森林が農地や放牧地、さらにゴルフ場やスキー場などのレジャー施設にも転用されているのです。
代表的なところでは東南アジアの森林をアブラヤシのプランテーションなどにしたことや、アマゾンの森林を小麦畑やサトウキビ畑、牧場などの農地に変えていることが挙げられます。
過剰伐採、違法伐採
紙の原料となるパルプをとるためや薪や炭など燃料にするための樹木を過剰に伐採することや法令に違反して伐採する違法伐採も森林破壊の原因のひとつです。
非伝統的な焼畑農業
この他には、非伝統的な方法によって行われる焼畑農業も原因のひとつになります。
焼畑農業は主に熱帯地域、亜熱帯地域の雨が多く降る地域で伝統的に行われている農業の方法です。
森林を焼き払って農地をつくり、数年間その焼き払った土地で農業を行ったあとは、別の場所に移動して、またその土地を焼き払って耕作します。以前農業をしていた土地の回復を待ち、その土地が回復したらまたその土地に戻り農業をします。これが本来の焼畑農業で、しっかりと持続可能なものになっています。
しかし、土地の回復力を考えることなく、持続可能でないやり方で行われる焼畑農業が増えているのです。これも森林破壊の原因のひとつとなっています。
森林破壊による負の影響
森林の重要な働きを森林の多面的機能としてここでもまとめましたが、森林が消失することはつまりこの重要な働きが失われていく、機能せず逆に悪い影響を及ぼすことを意味します。
森林破壊によって森林が失われていくことでどのような影響が出るのかいくつかに分けてまとめました。
野生生物への影響
森林破壊が進むことで、悪い影響を及ぼすことのひとつ目は、野生生物への影響です。
森林は地球の陸地のおよそ3割を占めていますが、これまで判明している地上の野生生物のおよそ半分以上が森林で生息しています。
森林破壊による森林の消失で、そこに生息する多くの生物たちの棲み処を奪い、その生態系を壊すことにつながります。森林の消失は、多くの野生生物を絶滅の危機に追いやる大きな原因になってしまっています。
温室効果ガスの排出量増加
森林は、大気中の二酸化炭素を吸収する大事な働きをしていることを一度おさらいしましたが、森林が消失されていくことは、森林が吸収できる二酸化炭素の量が減り、大気中の二酸化炭素が増加していくことを意味します。
既にアマゾンの熱帯林は二酸化炭素の排出量が吸収量を上回ってしまっていることをここでもお伝えしました。
今後も森林の減少が進み、二酸化炭素の排出量が増えていくことで、気候変動にさらなる悪影響を与えることになります。
自然災害の増加
森林は土壌の侵食や崩壊を防止する働きがあることを先ほどお伝えしましたが、森林破壊によって森林が消失してしまうと、この役割を果たすことができなくなり、土砂崩れや洪水が起きやすくなります。
また森林は土壌栄養分が豊富にありますが、森林の消失で地中の保水力がさがり、また土壌が雨で流れやすくなることで、土地がやせていくようになります。そして、砂漠化が進んでいきます。
砂漠化が進んでいきますと、気候変動にもまた影響を及ぼし、、豪雨や高温、山火事などの自然災害の増加に将来的につながることになります。
人間社会への影響
森林破壊はこの他にもまだ人の暮らしに様々な影響を及ぼします。
環境を破壊し、生態系のバランスを壊してしまう森林破壊は、疫病の蔓延を引き起こす可能性を高めます。
森林破壊による森林の消失と地球温暖化が進むことによって、伝染病を媒介する生物が増加し、デング熱、マラリア、黄熱病など疫病の危険地域が広がることになると予測されています。
森林破壊は紛争の拡大を引き起こすことになるとも言われています。
森林破壊によって、暮らしていた土地を追われることになる環境難民が増えたり、自然災害による被害を受けて貧困が深刻化すること事態が起こることになります。森林破壊の影響を受ける貧困地域において、暮らせる土地を求めたり、水や食料を求めて争いになることや国家などより大きい規模で森林の権利を巡って紛争になることが増えると考えられています。
さいごに
いかがでしょうか。
今回は森林破壊という問題について、森林が果たしている役割、森林破壊の原因、その影響などをそれぞれわかりやすいように簡単にまとめてきました。
現在、発展途上にある南米やアフリカ、東南アジアといった地域で、農業や商業のための大規模な森林破壊が続いていて、加速度的に森林の減少が続いています。
一方で、かつて森林破壊が問題となっていた中国やヨーロッパなどにおいては、森林が回復しつつある地域もあります。
先進国を中心に森林破壊を防ぐための取り組みが行われるようになっていますが、発展途上にある後進国では有効な対策をうてずにいます。
今後は途上国においても他の地域や国と同様に森林破壊を減らしていけるような、世界的な森林破壊対策の枠組みを作りだしていくことが重要となってきます。
森林破壊の問題についても、これから注視して、また新たな情報などを発信していけたらなと思っていますのでよろしくお願いします。
最後までよんでいただきありがとうございました。
参考文献
林野庁ホームページ https://www.rinya.maff.go.jp/index.html
「世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要」 FAO 仮訳林野庁 2020年https://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/attach/pdf/index-22.pdf
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