【もったいない】地球の資源を無駄にしている食品ロスの環境問題とは?

【もったいない】地球の資源を無駄にしている食品ロスの環境問題とは?

今回は食品ロスによる環境問題についての記事になります。
以前に食品ロス問題について大まかな紹介記事を書きましたが、今回は食品ロス問題の中でも環境問題に焦点を当てて、食品ロスを出すことでどれほど環境に悪影響を与えるのかについてまとめました。

今回の記事の中では当然食品ロスの話でもありますが、捨てられる食品の中で食べられる部分だけを指す「食品ロス」ではなく、食べられない部分も合わせた捨てられる食品全体を表す「食料廃棄」を前提として、食料廃棄がどれだけ環境に影響を及ぼしているのかについて書いていきます。

温室効果ガスの排出

なぜ食品ロス、食料廃棄の問題が環境問題にもつながるのか。
結論からいいますと、何よりも温室効果ガスを排出させることになるからです。

FAO(2015)の報告によると、廃棄された食料全体を一つの国だと仮定すると、温室効果ガスの排出量は中国とアメリカに次いで世界で3番目に位置づけられるという数字が出されています。


温室効果ガス排出量 ギガトン(CO₂) 出典:FAO(2015),WRI

全世界で生産された食料のおよそ3割ほどが食料廃棄となっているというのですが、食料廃棄という問題は生産された食料をただ無駄にしてしまっているというだけではありません。
食料廃棄は貴重な天然資源の浪費ともなっているのです。
食料を廃棄することは、その食料を生産するために使用したエネルギー、水、土壌、その他の資源を無駄に消費することになるからです。そして天然資源に限らず、食料を生産するための労力も無駄にしてしまうことになるので人的資源の浪費でもあります。

というわけで、食料廃棄がどれほど環境に悪影響を及ぼすかというテーマですが、
少し食料生産に話を移して書いていきます。

食料生産による資源の浪費

土地利用

上記に食料廃棄による温室効果ガス排出量をグラフで示しました。
これを土地利用に変えますと、食料廃棄は世界の農地面積の30%近くに相当する約14億haを使用していることになります。この廃棄される食料の生産に利用された土地面積を各国の国土面積と比べてみた場合、世界最大の面積を持つロシアに次ぎ、カナダや中国よりも上回る広さになります。このように表すと、どれだけ多くの食料が廃棄されているかということがわかるかと思います。

水利用

食料生産に使われる水の量の多さも問題となります。
小麦1キロにつき1100リットルの、米1キロには2700リットルの水が使われるといいます。私が読んだ本の中では、私たちが食べないで捨ててしまう食料には、手洗いや飲み水として日常で使われる量の2倍の水が必要であるという記述もありました。
食料生産にはこの水を汚すという側面もあります。
農地で過剰に使用された窒素肥料や、畜産を通じて生じる窒素化合物が、土壌で分解されます。これにより、硝酸、亜酸化窒素等の地下水汚染を起こさせる汚染物質を発生することになります。
また、食べ残しの処理も同様に水を汚します。
食べ残しを川に捨て、そこにある水を汚せば、その水を元のきれいな水に戻すためには、さらなる水とエネルギーが必要とされることになります。
食料ロスは地球にとって貴重な水資源の浪費でもあるのです。

エネルギー利用

食料を生産するためには当然大量のエネルギーも必要となります。
さらに、食料生産とそこに流通など他の要素も加えると、一人ひとりがその食事を通じて消費しているエネルギー量は相当なものになります。フードシステムにおいて生産された食料が消費者に届く流れの中で、加工や輸送、包装、そして特に冷蔵には多くのエネルギーを使うことになります。消費段階では、調理の際にエネルギーを使い、消費後にも、廃棄された食料を処理することに多くのエネルギーが使われます。世界のフードシステム全体で消費されるエネルギーの約38%は廃棄される食料に使われているといいます。
そしてエネルギーを使うことは当然、石油や石炭の化学燃料が使われることで、地球の天然資源の浪費、大量の温室効果ガスの排出につながってくるのです。

こうしたことからわからように、食料を生産するには温室効果ガスの排出は避けられないのです。
そして、その排出量はおそらく皆さんが思うよりもずっと多いものになっています。

シュテファン・クロイツベルガー,バレンティン・トゥルン(2013)の著書『さらば、食料廃棄 捨てない挑戦』の中では、「食料品に関連する温室効果ガスの排出量は全世界の総排出量のおよそ30%になる」との試算が出されていて、また次のようにも書かれています。

生産する食料品の半分が、収穫時に廃棄されるか、後に消費され、ゴミ箱に捨てられている。つまり、全世界の総排出量の15%に相当し、これは交通部門の13%よりも多い。食品廃棄物を半分に減らすことを目標とした場合、二台に一台の自動車を廃棄するのと同程度の温室効果ガスの削減効果があることになる。

食料を廃棄することで排出される温室効果ガスは、交通部門の温室効果ガスの排出量よりも多い可能性もあるのです。つまり、交通部門よりも食料廃棄の方が地球温暖化を進めているかもしれないのです。物事を単純に言うことはできないと思いますが、簡単な比較として、食料廃棄を現在の水準の半分までに抑えることができれば、全世界で使われる自動車が現在の半分になることと同等の温室効果ガスの削減効果で出るということが言えるでしょう。
それだけ、食料廃棄や食品ロスの量は多く、環境に悪影響を与えているのです。

今回の記事は食品ロスはなぜ環境に悪いのかについて少し詳しく書いてみました。
正確な数字でなくとも、およそ3割の食料が食べられることなく捨てられている現状があり、
全世界でかなりの食品ロスが発生してしまっている事実があります。
そして、今回この場で書いたように、その捨てられる食料を生産するためにはたくさんの資源が必要になります。
食品ロスを出すことは地球の資源を無駄遣いしていることに繋がっているのです。
これはとてももったいないことです。
私たちは日頃何気なく「もったいない」と思いながらも簡単に食品を捨ててしまっています。
食料を生産するところに目を向け、貴重な資源を使って生産された食品であるという認識を持つことができれば、その「もったいない」という思いはきっともう少し強くなると思います。
そのためにもこうしたことを伝えていく食育は重要さを増しています。
一昔前よりかなり食品ロス問題は問題として認知されてきていると思いますし、啓もう活動や教育も進んできていると思います。この先さらに教育が進み、多くの人が食品ロス問題を認識して、食品ロスを少しずつ減らしていける未来が近くなることを私は願っています。

 

参考文献
国際農林業協働協会(JAICAF)(2014)「食料のロス・廃棄が環境に与える影響」『世界の農林水産』835:03-08 www.fao.org/3/b-i4659o.pdf
シュテファン・クロイツベルガー,バレンティン・トゥルン(2013)『さらば、食料廃棄 捨てない挑戦』(長谷川圭訳)