【狩猟】僕のイノシシ解体初体験記<命をいただくということ>
- 2021.10.07
- 雑記
今回は僕の体験記事をお届けしたいと思います。
僕は今年2021年の8月に3週間ほど広島、瀬戸内海の島にある農家さんのところにお手伝いのような形でお世話になりました。そのときに、そこの農家さんでイノシシを仕留めて解体するという体験をさせてもらいました。この記事ではその体験談をお話したいと思います。
僕がここでお世話になった農家さんはミカンなどの柑橘類を栽培されているところでした。
ここでは、農家さんのご主人について色々なことを丁寧に教えてもらいながらミカン畑を中心に農作業のお手伝いをする日々でした。本当に親身な対応で色々とお話を聞くことができましたし、勉強になることが多く、貴重な日々を過ごすことができました。
野生のイノシシとの出会い
さてイノシシについてですが、僕が来て間もないころ、ご主人について農作業のお手伝いをしていたところに突然、ご主人のお父さんが畑の近くにこられて、イノシシを捕まえたと僕に見せに来てくれました。
このイノシシは畑の裏が山に囲まれているようになっていて、その山にある罠にかかったイノシシだといいます。
罠にかかったというイノシシを見せてもらって、持たせてもらいました。これが僕にとっての野生のイノシシとの初の出会いです。
イノシシの捕獲と解体をさせてもらえることに
野生のイノシシ見て初めて触れた僕でしたが、「自分の手でイノシシを捕まえて仕留めてみたい」などという思いを持ったわけではありません。
しかし、日常の何気ない会話の中で「獲れたイノシシの肉を食べさせてもらいたい」みたいな話をして、今度イノシシが罠にかかったときはその現場に連れてってくれることになりました。さらに有難いことに解体を一緒にさせてもらうことにもなってしまいました。
そんな中でしばらく経ったある日、ついイノシシがかかったという連絡がはいりました。
昼ごろ連絡をもらって、ご主人とお父さんと一緒に夕方前にその現場に向かうことになりました。
箱罠について
ここで罠について少しお話しておきます。ここのお父さんが行なっている猟は罠猟で、箱罠を使ったものです。
箱罠はその名の通り、箱上の檻のような形をしている罠で、餌などにつられて動物が中に入り込むと、半自動的に出入り口が閉まるという仕組みになっています。
獲物が罠にかかったら、銃で撃つか、槍で刺すかなどをらして、罠の中で獲物を仕留める「止めさし」を行う必要があります。
イノシシが罠にかかった現場に
現場に向かう時間になり、これからイノシシを仕留めて解体するということに僕はドキドキしながらも、軽トラに乗せてもらってイノシシがかかったという罠のところに連れてってもらいます。
この日罠にかかったイノシシはご主人の畑の山ではなく、車で10分ほど離れた山に仕掛けてあった罠です。
集落から少しはずれて山に入った道路の途中で車を停めて、罠がある山の中に入っていきます。
道路から山に入って少し進んだところに箱罠が置かれています。
そして、箱罠の中にいました。イノシシ!
箱罠に近づいていくと、箱罠の中に入ったイノシシのその姿が徐々にはっきりと見えてきます。
間近に見るイノシシはとても大きくて、その大きさにびびってしまうくらいでした。
かかったイノシシは推定およそ60kgの獲物です。
かかったイノシシは僕たちがやって来たことで、やはり不穏な空気を感じとったのでしょう。箱罠の中で暴れはじめます。
「止めさし」
お父さんが写真を1枚撮ってから、仕留めるために槍を持ちます。槍をかまえ狙いを定めて、タイミングを待ちます。
僕はびびりながら少し離れてその様子を見守ります。
そして、お父さんが金網の隙間からイノシシに槍を突き刺します。
これが見事に的中。前足の内側にある心臓をひと突きです。お父さんすごすぎます。
心臓を刺されたイノシシは先程のように箱罠の中を暴れ回ります。血はあまり出ていません。
しかしすぐに暴れるイノシシは勢いを失いはじめ、フラフラしてきて、最後には倒れます。
イノシシを持ち帰るために罠をあけて、僕はおそるおそる倒れて動かなくなったイノシシのその脚をもち、道に停めてある軽トラまで引きずります。
死んでいますが、つい今しがたまで生きて暴れていたイノシシです。恐怖心も抱きながら、重いイノシシを引きずります。大きいし、60kg級のイノシシは重いです。
それにイノシシが臭いんです。獣の匂いに加えて、地面がぬかるんでいたので箱罠の中の餌にしてた米ぬかがイノシシの体について結構な匂いを放っているのです。
何とか軽トラのところまで引きずってきて、2人がかりでイノシシを持ち上げ、軽トラの荷台に乗せて工場まで持ち帰ります。
イノシシの解体
まずは持ち帰ってきたイノシシの体を洗います。水で流して洗って体がキレイになりました。
解体をはじめていく前に洗ったイノシシの耳と尻尾を切ります。それとスプレーでその日の日付をイノシシに印字して、写真に撮ります。
ここから解体をはじめていきます。最初は首から下のほうへとお腹に包丁を入れてひらいていきます。
体をひらいたら、生殖器を切りとり、内臓を取り出していきます。
槍で心臓をひと突きにしたために出血をあまりしてないので、体の中で血が球体に固まっています。
内臓と血を取り出して、体の中を洗います。洗ってキレイになったらイノシシを台の上に移して、皮を剥いでいきます。
包丁を使って、刃を皮と肉の間に当てて滑らせるようにして、皮を剥いでいきます。
脂がすごくあったのですが、皮の下にある厚い脂も皮と一緒にとっていきます。
皮を剥がして頭を落としたら、肉を切り取っていきます。
切り分けた肉は部位ごとにビニール袋に名前を書いて入れて封をして、冷凍庫に保存しておきます。
前足、後足、背ロース、内ロース、スペアリブ、バラ肉といった具合にそれぞれの部位を分けてビニール袋に入れて保存します。
その後、簡単な後片付けをして解体はお終いです。この解体の作業には結構な時間がかかるんです。
この日は、肉の解体でおよそ3時間弱かかりました。僕も包丁を持って肉の解体を一緒にさせてもらっていたのですが、ほとんど戦力にはなれずといった感じで。
それでも普段でもイノシシを解体するのには2人がかりでおよそ3時間かかってしまうといいます。肉を切りとっていくにはパワーも必要になりますし、本当に大変な作業だと思いました。
肉にしたイノシシをいただきます!
夕方から解体をはじめたので、外は真っ暗、遅い時間になってしまっています。僕もイノシシの解体でパワーを使ったのでお腹が空いています。何日か分の肉を家に持って帰ってご馳走です。さっそく肉になったイノシシをみんなでいただくことにします。
この日は内ロース、イノシシの中でも1番やわらかくて美味しいと話してくれた部位をいただきます。岩塩と胡椒を肉にふって、フライパンで焼いて焼肉にしました。
焼肉にした内ロースはとても美味しかったです。赤身の肉で肉の旨みがあって、やわらかくて。本当にやわかくてイノシシとは思えないほどでした。
まとめと得られた学び
今回は偶然と農家さんのご厚意によって自分たちで獲ったイノシシをさばいて食べるという貴重な体験をさせてもらうことができました。
自分の手によって仕留めてはいませんが、止めさしの現場に立ち会わさせてもらうこともできました。
僕にとっては自分たちのその手で動物を殺して食べることはこれまでの人生の中でも初めての経験になりました。「命をいただく」ことの重さを学んで少し理解することができました。
現代では食肉の生産と消費をつなぐ距離がとても離れてしまっています。
自分たちが食べる肉なのにそれがどのようにつくられて、どんな過程を経て、僕たちの食卓に並べられることになるのかを全く実感することができていません。
人間の思うように大量の家畜を美味しい肉とするために無理をさせて生産する現代の工業型の食肉生産は自然の姿ではありません。
自分たちの手で殺してさばいてというのは無理があると思いますが、本来ならば動物たちの命をいただいてそのお肉を食べるという行為をもっと身近に感じていなければならないはずだと思います。
この記事を読んでいただいたあなたには今一度食肉につい、現代の仕組みやご自身の消費の仕方など、を考えてもらいたいと思いますし、命をいただくという行為、それによって僕たちが生かされているんだということを実感できるようにして欲しいなと思います。
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