地球の水がピンチ!水資源の問題について<その要因とは?>

地球の水がピンチ!水資源の問題について<その要因とは?>

水不足が世界で深刻な問題となってきています。

近年気候変動の影響によって世界中において様々な被害が出ています。

気温上昇と異常気象による山火事や洪水などの災害、それらによる野生生物、人間社会への影響はこのブログにおいてもいくつかご紹介してきました。

この記事では、地球の水資源の問題についてこれまでのように簡単解説していきたいと思います。

地球の水資源について

地球は「水の惑星」と呼ばれるほど豊かな水に恵まれています。

しかし、水が豊富に存在しているのですが、僕たちが使える水というのはとても少ないのです。

地球上の水の97.5%は海水で占められていて、淡水は残りの2.5%になります。
しかも、その淡水の約1.7%は南極や氷河などであり、0.7%は地下水になっていてすぐには使用することができません。河川や湖沼にある水で現在人間がすぐに利用することができる水は地球上の水の0.01%しかないのです。

人間にとってこの貴重な水資源を巡って、現在水不足の問題が大きく叫ばれるようになっています。

もともと水資源は地域によって偏在が大きく、乾燥が激しい気候帯などでは常に水不足の問題に直面しているところも世界中では多くあります。

現在も世界人口の4割ほどにあたるおよそ36億人が少なからず水不足に悩まされている状態にあるとされていますが、今後水不足に直面する人口はさらに増えることになっていくことが予測されています。

その要因となるのが、気候変動であり、気候変動の影響を最も受けるのは水資源だといわれるほどです。

今後も世界人口は増え続け2050年にはおよそ97億人になることが予測されていますが、人口の約半数が水不足にさらさるリスクがあり、人口の4人に1人は慢性的な水不足の影響を受けることになるなどとも言われています。

水不足になる要因

水不足となっている要因は大きく分けて2つあります。

人間の活動と気候変動によるものです。

人口の増加

要因のひとつとして、まず人口の増加が挙げられます。

当然のことですが、人口が増えるほど水の使用量は増えていくことになります。

産業革命後から人口は急激に増えはじめ、現在の世界人口はおよそ79億人弱です。

今後も人口は増え続け2050年にはおよそ97億人になることが予測されています。

産業活動

増え続けた人口を養うためには、水に加えて食料もその分必要になります。

食料を生産するために農業が行われますが、この農業による水利用が水不足を招いている最も大きな要因と言っていいかもしれません。農業の水利用に関しては別で少し触れることにいたします。

農業を含めて工業など人の生活を支えるための産業活動においても同様に水を使うことになります。

生活と排水

そして、人が暮らしていくためには食べるものだけでなく、様々な面で生活用水としての水が必要になります。

また、人が暮らせる土地をつくるための土地化によって森林などが伐採、開発されることとなります。

さらに生活用水、工業用水として人間に利用された水は排出されて生活排水、工業排水となります。

この排出された水が、河川や海、地下水へと流され、キレイな水を汚染していくことになります。使えるはずだった水は汚染されて、使うことができなくなります。

農業

こうした人間の活動によって水不足を招いているわけですが、最もインパクトが大きいのが農業です。

世界の水利用を用途別にしてみると、飲料水を含む生活用水は全体の8%にとどまり、22%が工業用水、そして残りの70%が農業用水となっています。

人は食料を生産するための農業で大量に水を使っているのです。

例を挙げていうと、1㎏のトウモロコシを生産するために使われる水は1,800リットル、さらに牛を育てて1kgの牛肉を生産するためには15,500リットルもの水が必要になるといいます。

また農業による水の汚染も深刻な問題です。

農地で過剰に使用された窒素肥料や、畜産を通じて生じる窒素化合物が土壌で分解されることで、硝酸や亜酸化窒素等によって地下水が汚染されていってしまっています。

土地利用変化

農業に関連して、農地を開発するための土地利用変化も大きな要因のひとつです。

農地と牧草地への転換によって、1960年から2000年までの約40年間に世界のおよそ2億ヘクタール以上の熱帯雨林が失われたといいます。当ブログでも以前記事に書きましたが、アマゾン熱帯林における農地利用のための開発は著しいものがあります。ブラジルにあるアマゾンの熱帯林は過去50年でおよそ2割が失われたというのですが、そのほとんどは農地もしくは牧草地として利用するために切り開かれています。

気候変動

気候変動で地球温暖化が進むと、豪雨や干ばつの発生や降雨パターンなど気候システムの変化が起こることが予測されています。

地球上の水は、蒸発して、雨が降って、川に流れてというように気体、液体、固体の状態に変化をしながら循環しています。

地球温暖化によって、降雨などの気候システムが変化してしまうと、水循環のサイクルにも変化を与えることになります。そして、積雪量の減少、河川流出量の減少など水資源の利用に様々な影響を及ぼすことになります。

さらに地球温暖化は、氷河や氷床の融解、海面の上昇を進ませます。
海面の上昇は海水を増やすことになりますが、海水を使うことはできません。

冒頭でご紹介したように人間が使うことができる水は地下水や河川の水といった淡水で、その量は限られています。

その限られた水資源が気候変動によって、今後減っていくことが予想されているのです。

水不足のこれから

水ストレス

水不足の問題においては、「水ストレス」と呼ばれる指標が用いられることがあります。

「水ストレス」は日常生活に不便を感じる状態を示していて、河川などを除き年間で使える水の量が一人当たり1,700トンを下回った状態であるときを指していいます。

またこの使える水の量というのは、飲み水だけでなく、農業、工業、エネルギーなどで使う水も含まれているもので、一人の人間が普通の暮らしをしていくのに必要最低限の数値とされています。

同様に1,000トンを下回る状態を「水不足」、500トンを下回る場合には「絶対的な水不足」といいます。

世界資源研究所(World Resources Institute)の2019年の発表によると、現在水ストレスもしくは水不足にさらされている地域は17か国、およそ18億人がその状態に直面しているとされています。

今後2050年には、「水ストレス」または「水不足」の状態にある地域は54か国、世界人口の4割にあたるおよそ40億人に上ることになると予測されています。

またWRIのホームページでは、世界各地域における2040年ごろの水ストレスの状態を表した地図を見ることができます。この地図ではアメリカ西部、地中海沿岸地域、中国北部やインドなどで水ストレスが高くなっていて、日本でも水ストレスが高くなることが予想されています。

WRIの世界水リスク地図はこちらから

アフリカ・中東地域の水不足

今後気候変動の影響を受けて、降水パターンに変化がおき、降水量の差が地域によって大きくなるとされています。高緯度地帯と赤道地帯は降水量が増加することになりますが、中緯度と亜熱帯の乾燥地帯は降水量が減少することになると予測されています。

ほとんどの乾燥地帯、亜熱帯地帯においては、降水量の減少に加えて、それに伴い地表水及び地下水も減少することになるので、この地帯における利用可能な水資源が著しく減少することになると予想されています。

中東や北アフリカなどの乾燥地帯はもともと水資源が少ない地域で、水ストレスの高い地域でありましたが、今後さらに降水が減り深刻な水不足になることが予測されています。

そして、これらの地域では水資源を争って紛争や内戦がすでに起きています。

2015年から内戦状態にあるイエメンでもその背景には水不足があります。中東にある国で、もともと降水量は少ない地域でありましたが、近年さらに降水量が減少、地下水源を巡って内戦が発生しています。さらに悪いことに内戦の長期化によって地下水源は急速に枯渇してしまい、深刻な危機にさらされています。

こうした例や中東のチグリス・ユーフラテス川、アフリカのナイル川、インドの河川をはじめとして河川や湖沼、地下水源の利権を争う水利権問題やそれによる紛争、内戦は世界各地で頻発していて、今後さらに水不足が深刻化していくことによって、さらなる紛争の勃発、状況の悪化が懸念されています。

おわりに

僕たちが知らなければいけないこと

ここまでお話してきたように近い将来の水不足はもはや確実に訪れます。

そして日本に暮らす僕たちにとっても他人事ではありません。水が豊かな国の日本であっても水ストレスが高くなることが予測されていて、生活に支障をきたすような水不足の状態になることも増えていくことでしょう。

しかも日本は多くの食料の輸入を通じてその地域の大量の水を消費しています。生産にとてつもない量の水消費が必要となる牛肉、小麦、大豆を大量に他国から輸入しています。

それらの輸入されてきた食べ物を食べることで僕たちは普段の暮らしにおいて、知らず知らずのうちに食べ物を通して大量の水を消費し、世界の水不足問題を進ませてしまっています。

そのうち知らないだけでは済まされないほど水不足の問題は大きく深刻になるかもしれません。

改めて一人ひとりが水と資源の大切さを理解し、僕たちができることを考えていかなければなりません。

僕たちにできること

もちろんこの問題を改善していくためには国や国際機関によって対策をとり、大きなインパクトを与える必要があるでしょう。

水不足の最も大きな要因となっているものは農業における水利用であり、
アマゾン熱帯林の開発を抑制したり、生産現場やそこに向けた働きかけ、取り組みが必要になってきます。

農業やその生産現場とは僕たちは直接関係しているわけではないかもしれません。

しかし、消費を通じて食べ方や食べるものを選んでいるのは僕たち消費者一人ひとりです。
現在の水不足を招くような大量の水を消費して食肉やその飼料を生産する農業をつくってきたことに対して僕やあなた、その他大勢一人ひとりが責任を負っていると考えています。

「僕たちに何ができるのか」については、まずはそうしたことをきちんと理解することが必要です。

そして、僕たち一人ひとりの行動はインパクトを与えないわけではありません。水不足問題を良くしていくために、僕たちができる小さなことはいくつもあります。

普段の暮らしでは食生活において「国産の食べものを選んで消費する」「肉食を減らして野菜等を増やす」「牛肉を控えて他の肉を選ぶ」など小さなことでも僕たちができることはありますし、実際これらを意識することは環境問題にとってとても大事なことです。

また、日常生活においても「蛇口を使うときだけひねる」「水を流しっぱなしにしない」「洗濯の水はお風呂の残り湯を使う」ことなど節水を意識することも意味がないものではありません。

まずは自分がすぐにできるところから意識して続けていってみましょう。

 

参考文献

『データでわかる2030年地球のすがた』 夫馬賢治著 2020年 日経BP

『2020年 世界の水の現状』 WaterAid https://www.wateraid.org/jp/sites/g/files/jkxoof266/files/2020-03/on-the-frontline.pdf

『World Water Development Report 2018』The United Nations 2018年 https://www.unwater.org/publications/world-water-development-report-2018/